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【第二回意識調査】被雇用者側から見た株式上場

自社の上場廃止を従業員はどう見ているか

従来の会社創業者や経営者、大株主の立場からの「株式上場をどう見るか」という見方ではなく、企業に雇用される側即ち被雇用者の立場から「会社の株式上場」をどう見るかというアンケートを実施し、株式上場にあたり企業として上場のための新たな判断材料を提供しましたが、その第二段の意識調査がまとまりましたので、ここに報告することにします。第２回目の意識調査は「会社の株式上場をどうみるか」というテーマについて「自社の上場廃止をどうみるか」という裏側から会社の上場というものを覗いてみたものです。（アンケートの対象・その属性等については巻末に掲載）

上場企業に勤める・・・3分の1

I. 勤めている会社は上場していますか

	今回	前回
上場企業	31.6％	32.9％
非上場企業	63.7％	61.7％
知らない	4.7％	5.2％

前回の調査とほぼ同じような数字となっている。上場企業に勤めるのが全体の３分の１弱である。

転職するなら上場会社・・・３人に１人
－現在の雇用状況では就職優先で決める

II. 転職対象として上場か非上場かどちらを選びますか

	今回	前回
上場企業	29.8％	31.5％
非上場企業	3.9％	7.1％
こだわらない	66.4％	61.4％

「上場企業を選びたい」とする人は前回よりも若干減少し、３０％を下回った。「非上場企業」を選ぶも減少している。「こだわらない」が前回よりも増加し全体の３分の２に達している。再就職にあたっては上場会社を選びたいという意識は強いが、設問１０の回答に示されているごとく最近の経済情勢の下で、非雇用者の労働状況や就職状況は悪化しており、こうした現状認識からすれば転職に当たり、「上場企業」だ「非上場会社」だと選択している状況ではなく、就職最優先ということであろう。株式上場のメリットの一つに「上場すれば優秀な人材が集めやすい」ということがあるが現状でもこのことが言えるかどうか若干の疑問も出てきた。

会社が上場廃止になっても会社を辞めない

III. 会社が上場廃止になったら

最近上場会社の上場廃止が増加しているが、今年も既に７１社が上場廃止となっている。その理由は大別すると「１．民事再生等による倒産」「２．完全子会社化」「３．吸収合併」「４．その他」となっている。この設問では上場廃止の理由を指定していないが、殆どの人が辞めないと回答している。辞めるはわずか３％の回答であり、上場廃止そのものは会社を辞める絶対的な理由ではないことを示している。ここから読めることは、会社が上場廃止になっても自身の社員としての身分に特に影響がなければそれで良しということであろう。

必ずしも会社の株式上場は全社員の喜びには結びつかない
－環境によっては上場すべきではない

IV. 会社が上場することになったら

非上場会社に勤めているとした人を対象に回答を求めたところ、「喜ばしい」と回答をした人は３７％であり、「特に関心がない」の４０％と半々の意見を占めている。問題は「心配」および「絶対に反対」が２２％を占めていることである。一つは回答の対象者が非上場会社に勤める人が対象であったので、上場会社のメリットの恩恵を感じていないことによるものであり、二つ目は上場しても現在の経済環境下で上場会社として順調に進めるのかが心配だということであろう。
前回（第一回）のアンケートの中で「あなたが会社の社長だったら自分の会社を上場させてみたいですか」という設問で、５０．３％が上場させたいと答えているが従業員の立場での上場に関する意識とはかなりの違いがみられることは否定できない。

上場会社の株を持っている・・・４分の１
－株主総会には出来ればいってみたい

V. あなたは上場企業の株を持っていますか

VI. 持っていると答えた人への質問です。
自分が株を所有している企業の株主総会に行ったことがありますか

現在の不況・・・７割が影響あり
直接自分に影響あり・・・半数

VII. １００年に一度の不況といわれております。２００８年下半期以降の、あなたの労働状況について一致するものを選択してください

現在の不況により、リストラ等直接本人に影響があったとするのが４９％に達しており、会社倒産や会社の業績悪化までを広げると７１％強に達している。この不況の根強さを物語っており、非雇用者側にすれば自分の労働状況に影響が及ぶことを心配している状況が明らかになっている。

無理をして上場維持の必要はない
－上場廃止も選択肢の一つ

VIII. あなたの会社が上場廃止の恐れが出てきたとき、あなたはどう思いますか

上場廃止ということは会社にとっては信用力の点で大きな問題であり、また株主にとってみれば、株式の売却の場がなくなることであり出来るだけ避けなければならない事項であると思われてきたが、会社の従業員はどう考えているか。「上場廃止になっても止むを得ない」と「上場廃止になるほうが望ましい」の両方で８９％を占めている。従業員の立場からすれば、無理をして上場維持のために頑張り続けるよりも、上場廃止になっても会社継続の方が望ましいということである。
当アンケートの設問IIIで、会社が上場廃止になっても「会社を辞めない」が７４．３％という高い数字であったことから関連していえることは、従業員にとっては上場廃止になっても会社が継続していき自分の労働状況が変わらなければそれで良いと考えているといえる。上場廃止について株主や経営者と従業員の意識には大きな違いがあることが明確である。

上場会社としていろいろな制約が多い
－上場会社としてのメリットが感じられない

IX. 設問VIIIで「上場廃止になるほうが望ましい」と答えた方へ。その理由を下記の項目の中で該当するものを選択してください。（複数回答可）

株主対応など上場会社としてのわずらわしさがなくなる	15人
自分の社員としての身分には変化がない。上場会社の社員でなくなる分気楽になる	17人
上場会社であるがために営業面でもかなり無理をしてきた。その必要がなくなる	15人
上場会社としてのメリットが感じられなかった	21人
上場廃止になったほうが会社も自由に経営が出来、より業績向上が期待できる	16人

理由については５つの選択肢について殆ど同数の回答がなされた。その中で最も多かったのが「上場会社としてのメリットが感じられなかった」であり、会社が上場を計画する場合上場することにより種々のメリットがあり、そのメリットを受け企業の成長・拡大を図るために上場のみちを選択するわけであるが、従業員の立場から見れば上場会社であるけれど上場会社としてのメリットが感じられないのであろう。上場することによるデメリットとして指摘されている会社の中身をオープンにしながら経営していくことの難しさや煩わしさを強く感じているといえる。

上場廃止になっても会社は事業を継続していくと思う

X. 上場廃止になった会社はどうなってしまうと思いますか

上場廃止になった会社はどうなると思うかという設問に対し、会社は上場廃止になってもそのまま事業を継続していくだろうとする回答が過半数をしめている。これは現実に上場廃止になった会社でも、会社が消滅することなく、規模の縮小等はあっても事業を継続しているケースが殆どであり、この実際の現象を見た結果と思われる。さらにこの回答をした人の、会社の上場廃止は止むを得ないけれども、自分はそのまま社員として勤務していたいという願望が現れていることが読み取れる。「再上場」とする回答が１２．６％あるが、現状は、金融機関等の支援を受けやすい大企業の場合は上場廃止になっても再上場に向かうケースもあるが、そうでない場合は再上場は実現困難なことである。

従業員にもメリット上場を
－従業員は雇用の確保と身分の安定が優先

XI. 最後に

最後に、今回の第二回目の意識調査の結果、非雇用者は、全体的な上場企業の有利さは認めながらも、会社の上場・非上場の問題よりも、自己の雇用の安定と身分の保証を大前提として考えるという意識が前回の意識調査に引き続き更に明確にされた。
会社の上場に当たっては、創業者や大株主のメリットだけでなく、従業員にとってどのようなメリットがあるのか、また具体的にどのようなメリットを与えることが出来るのかを明確にする必要があろう。上場がより従業員の負担を増加させるだけでは意味のない上場であり長続きはしないのではなかろうか。

以上

アンケート対象

対象：サイト利用者 366名（女性 24.0％　男性 76.0%）、平均年齢 38.6歳
調査実施期間：2009年8月6日～8月31日

アンケート回答者の属性

【業種】

製造	25.8％
建設・不動産	14.5％
サービス・娯楽	14.3％
卸売・小売	12.1％
情報通信	8.0％
医療・福祉	4.1％
金融・保険	3.8％
公務	3.0％
教育	3.0％
宿泊・飲食	1.9％
農・林業・漁業	0.6％
その他	9.0％

【職種】

技術	41.1％
営業	19.8％
総務	13.0％
販売	8.3％
企画	6.9％
経理	6.3％
経営企画	2.8％
人事	1.4％
広報	0.6％

【役職】

平社員	51.4％
主任	11.6％
課長	10.8％
係長	8.3％
派遣	3.9％
部長	3.6％
アルバイト	3.6％
自営業	1.7％
その他	5.3％